NPO法人東京レインボープライド ならびに
東京レインボープライド2017運営委員会 御中
東京レインボープライドの運営スタッフ・ボランティアのみなさまには、パレードやイベント開催にあたってのご尽力に、感謝し敬意を表します。今年のパレードも終了し、お疲れさまでした。
わたしたちは、勉強会や集会・ワークショップなどの活動を行っている「プラカとか作るフェミとLGBTの会」です。今回は、5月7日のパレードにおいて東京レインボープライドによって行われた一部参加者への強権的な排除について、公開質問状を作りました。経緯の説明および見解を伺いたいと思いますので、後述の4つの質問にお答えいただくようお願いします。
◆◆◆(1)パレードは「集会の自由」「表現の自由」として保障されている
東京レインボープライド(以下TRP)は、5月7日のパレードに途中参加して一緒に歩いていた「プラカとか作るフェミとLGBTの会」有志8人を、「(パレードと)一緒じゃない」として、パレードから強制的に追い出しました。おそらく警察に連絡することによって、参加者を公道のデモから弾き出したのだと思われます。
そうであるならば、TRPはかなり怖いことをすると考えざるを得ません。パレード(デモ)は、憲法第二十一条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」によって保障されているものです。TRPは、日本の最高法規である憲法が保障する「集会の自由」「表現の自由」(*1)を自ら踏みにじり、市民の権利を切り詰めることに加担して、自らに連なる“仲間”を切り捨てるために警察権力と協働する団体なのでしょうか。本来は、もし万が一参加者が警察に弾圧されそうになったときにも参加者を集団で守ろうとするのがデモ主催者および参加者であって、間違っても主催者自らが参加者を警察に「委ねる」「売る」ことはありえない、あってはならないのではないでしょうか。あるいは、妨害や暴力でなくても、TRPが何らかの判断で「パレードの参加者ではない」と決めたパレード参加者なら、警察を使って/に使われて実力で分断する方針なのでしょうか。警察からの不当な根拠のない指示(*2)をTRPの“ルール”として絶対化し他人(参加者)にも強要し、それに服従しないパレード参加者は「異分子」だとして積極的に排除するということでしょうか。
このような主催者によるパレードからの強権排除に大きな疑問と懸念を抱きます。
◆◆◆(2)パレードからの追い出し
まず、パレードに参加した「プラカとか作るフェミとLGBTの会」(以下「プラカの会」)が把握している事情を以下に記します。
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「プラカの会」有志8人は、明治通りの神宮通公園を少し過ぎた辺りで、パレードの最後の隊列に途中参加しました。隊列の末尾で掃除道具を持って歩いているグリーンバードの方たちの前ぐらいの位置に入り、横断幕を持って車道をパレードし始めると、「プラカの会」の先頭・Fの近くに警備の警察官が来て、「歩道じゃなく、車道を歩いてください」と言いました。そのまま引き続き車道を歩きました。
しばらくして「プラカの会」がグリーンバードの先頭と並行するようになるとグリーンバードの人が「みんな前に来てー」とメンバーを呼び始めました。
そして、TRPスタッフの人がFの左前方に寄って来て、咎めるような口調で「受付しましたか」(*3)とFに言い、Fは「これってデモですよね」と答えました。するとグリーンバードの人がFに対し「ルールは守りましょうよ」と言ってTRPスタッフに加勢し始め、Fは「だれでも歩けるんですよ」と言いました。TRPスタッフは「パレードができなくなったらどうするんですか」と言い、Fは「そんなことないですよ」、TRPスタッフ「上の人に言ってもいいんですか」、Fが「いいですよ」と答えると、TRPスタッフはグリーンバードの人にお礼を言って去っていきました。この間、「プラカの会」のLの真横でTRP救護班車両の人が「警察を呼ぼう」という話を聞こえよがしにしていました。
その後、歩くFの身体をグリーンバードの人が軽く腕で押し戻そうとしながら「ルールは守りましょうよ」と言い、Fが「身体を当てるのは暴力じゃないですか」と伝えると、グリーンバードの人が「わたしたちと一緒だと思われると困るんです」と言うので、Fは「わたしたちって誰ですか」とたずねましたが、グリーンバードの人は答えずそっぽを向きました。また、TRP救護班車両は、歩いている速度とはいえ、ずっと50センチの距離に寄せてきており、幅寄せで追い出さんばかりのはっきりとした敵意が感じられました。
それから十数分ほどパレードを歩いて、明治神宮前交差点を左折して表参道に入って少し進んだ頃、「上の人に言う」と言って去ったTRPスタッフが戻ってきましたが、グリーンバードの人と話すだけで、Fに言葉をかけることはありませんでした。
突然、警官がグリーンバードと「プラカの会」の間にTRP救護班車両を入れようとし始め、TRPスタッフと警官がFの前に腕を差し入れて立ちはだかりました。Fは警官に自分たちもパレードの参加者と一緒であると言いましたが、TRPスタッフらは一緒ではないと言い、警官が「(スタッフが)一緒じゃないって言ってるから」「無届けデモになりますよ」と言い、「プラカの会」8人は外に出される形になり、やむなく歩道に上がりました。
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◆◆◆(3)東京レインボープライドへの4つの質問
それでは、以下、質問です。
【質問1】 「上の人」とは警察? 強権排除の経緯について
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◎「プラカの会」8人は、参加当初に警備の警官から「歩道じゃなく、車道を歩いてください」と声をかけられた以外に、警察からは何か注意をされるでもなく排除の意思は感じられず、車道をパレードしていました。が、TRP救護班車両の人が「警察呼ぼう」と言い、「上の人に言う」と言って去ったTRPスタッフが戻ってきた後に、何の説明もなく、突然パレードから強権排除されました。TRPの上層(?)スタッフの人が話を聞きにくることもあるかと思っていたのですが、「上の人」とは警察のことだったのでしょうか? パレード参加者の「プラカの会」から見ると、TRPが主導して、警察に連絡のもと排除したように思えました。あるいは、TRPと警察は結託してパレード参加者を排除する際の手筈を整えていたのでしょうか。それとも、警察が参加者を排除しだしたのに対し、TRPスタッフは参加者を守ろうとせずに「一緒じゃない」と参加者を切り捨てたのでしょうか。
TRPスタッフが言った「上の人」とは誰ですか? 誰にどのようなことを報告し、それからどのような経緯で警察が動くことになったのかを説明してください。
【質問2】 「救護班」の危険な言動について
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◎TRP「救護班」車両の人が「警察呼ぼう」と言っていたことについて、どのように認識していますか? また、具合の悪くなった参加者を助けるのが役目と思われる「救護班」が、参加者(歩行者)に対して危険なほど近い距離に車両を寄せてきたことは、その役割を考えれば二重に問題であり、運転者として脅す気がないとできないことです。運転者としてありえない近さなので、怪我をさせても構わないという意思が感じられて、それが怖いと思いました。このTRP救護班の行為をどのように認識していますか?
【質問3】 警察の不当な指示に文字通り従う自主規制・TRPスタッフの過剰警備について
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◎「プラカの会」8人は、パレードを妨害したり、暴力的に振る舞ったりしたわけでもありませんが、TRPはそのようなパレード参加者の些細な(けれど重要な)非暴力不服従をも敵視して、警察を使って/に使われて強制的に排除するという方針なのですか? TRPは、警察(の不当な注文・指示)に過剰適応しているということはありませんか?
(警察による意味のない不当な指示を唯々諾々と受け入れて内面化し、主催者TRPが警察に忠実なエージェントとなって参加者を監視し、率先してデモの規制・分断に動くことになれば、警察が排除しようと思ってもいない参加者まで、主催者からの報告・依頼によって排除に動くことができ、警察権力はまるで自ら強制したのではないかのようにしてパレード参加者集団全体を支配することができます。)(*5)
【質問4】 グリーンバード「わたしたちと一緒だと思われると困るんです」、TRPスタッフ「一緒じゃないです」について
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◎「プラカの会」Fに対してのグリーンバードの人の発言「わたしたちと一緒だと思われると困るんです」について、グリーンバードのメンバーでもある/あったTRP共同代表の杉山文野さんはどう思われますか?(TRPとして答えるのが難しければ、グリーンバードに直接たずねます。) また、排除の際、警察からの問いかけに対してTRPスタッフらが「一緒じゃないです」と答えたことについて、どう思われますか? パレード(デモ)を歩く人を選べるかのようですが何をもって「一緒じゃない」とするのですか? このときTRPにとっての「わたしたち」とは誰ですか? パレード/プライドは誰のものと考えますか?
質問は以上です。
◆◆◆(4)パレードはどこへ向かうのか
今回のTRPによる排除の姿勢、参加者一人ひとりの意思・自由・尊厳を顧みず踏みにじってでもTRPが邪魔なノイズ・異物とみなした者を強権的に排除する姿は、渋谷区による公園封鎖占領・野宿者排除、ひいてはイスラエル国家による占領・アパルトヘイト(パレスチナ人の隔離と人権侵害)にも同調するものとは言えないでしょうか。
TRPがパレードを「デモ」でなく「商業的娯楽イベント」のようにしたいと目指している面があることは窺えます。TRPの戦略としては、本来の権利をいったん返上し、警察の不当な指示であっても従順に受け入れ、自ら参加者にも強要して家畜化(domestication)し、その小さな囲いの中で「ハッピー」を演出することこそが大事で、行政当局に気に入られて囲いを少しでも広げてもらえるように「信用」をとりつけるつもりかもしれません。
しかし、パレード(デモ)は、わたしたちの「自由」の祝祭でもあるのです。TRPが主催しているパレードは形式上デモであるし、何よりもゲイ・リべレーション等に連なる形で始まり、社会から黙ることを要求されがちな主張を社会に対して届ける場として、小さくとも各地で続いてきた性的少数者のパレードという歴史があります。こうした歴史経緯上、「社会の抑圧に対して主張を行う」ことを手放せないという意味において、パレードはデモにほかならず、それ以外のものではあり得ません。そしてデモの即時参加性、つまりデモを見た人が主張に賛同してその場でその列に加わることは、他のデモ同様に参加者に対して保障されるべきです。
今回のような警察と協働しての強権排除は、TRPの“ルール”に従っていれば被らない、“ルール”に従わない人が良くない、と思う人もいるかもしれません。けれども、そのような切断処理は、「性的少数者」のみならず万人に保障されるべき「人権」よりも、警察の不当な指示・抑圧への全き服従を何の疑問もなく優先することであり、大きな権力が示す規範を強化し、その支配を不問に付すことです。また、TRPの方針に従順な人だけをパレード参加者とするという排他的な振る舞いであり、ひいては警察や国家の抑圧・暴力に抵抗する人や運動(たとえば、渋谷区宮下公園の野宿者排除に抗議して不当逮捕された方々や、沖縄の新基地反対運動で不当逮捕され長期勾留された方々など)を切り捨てることに加担することでもあるでしょう。
さらに、東京のパレード/プライドは、1990年代から主催者と名称が変遷しつつ、それ以前からの先人の歩みを含め多くの様々なコミュニティや参加者一人ひとりが陰になり日向になり努力し抵抗し支え育んできた歴史の上にあるのであり、参加しない人も含め、みんなが刻々と形作るものです。
そして、今後のパレードを支える/ない人、参加する/しない人のためにも、上記の4つの質問に、誠実にお答えいただくようお願いします。
お忙しい中とは存じますが、重要なことですので、5月31日までに、ご回答ください。
2017年5月17日
プラカとか作るフェミとLGBTの会
weretheagitpropsatpride@gmail.com
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[注]
(*1) 「集会の自由」「表現の自由」
旧大日本帝国憲法においては、「法律の範囲内において」という記述がありましたが、現行の日本国憲法では、無条件に保障されています。また、世界人権宣言では、第19・20条で謳われています。
(*2) デモに対する警察からの不当な注文・指示について
多くの地方公共団体では公安条例(東京都は「集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例」)を制定し、公安委員会(警察)はデモに対しても交通秩序維持等と称して、根拠のない事細かな許可条件をつけてくる場合が多いのですが、本来、これは憲法違反です。
(*3) 「受付」「ルール」について
TRPサイトの参加方法のページに示されている「マナー」や「注意事項」を指すと思われます。受付については、フロートの人数配分の整理という点から便宜的な方法であり、90年代から採用されていますが、絶対的な条件ではありません。
(*4) 強制排除の様子を記録した動画の文字起こし
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「上に言う」と言って去ったTRPスタッフが戻ってきてグリーンバードの人と話す。プラカの会には何も言わない。
グリーンバードの人(TRPスタッフに)「黙ってられなくて」
TRPスタッフ(グリーンバードの人に)「わたしも一緒です。よく言ってくれました」
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警察「こっちの車が入りまーす」
TRPスタッフ&グリーンバード「はーい」
警察「はい車入るから止まって、止まって、ね」
(スタッフと警官が、プラカの会の前に腕を入れて立ちふさがる)
警察「デモの車が入るから」
プラカの会「デモの車?」
警察「うん。一緒じゃないから。一緒じゃないんでしょ?」
TRPスタッフ&グリーンバード「一緒じゃないです」
プラカの会「一緒ですよ」
警察「ほら、一緒じゃないって言ってますから」
プラカの会「何が一緒じゃないの」
警察「無届けデモになりますよ」
プラカの会「無届けデモだって」
警察「ここに入れるから。車入れるの」
沿道の2人「えーい、お疲れさまでーす」
プラカの会「車入れるんだって」
警察「ここはあなたたちはもう」
沿道の2人「はいはいはいはーい(笑)、おまわりさんお疲れさまー」
プラカの会「排除するらしい」
警察「これ、入れないで」「わかりました」「車」
プラカの会「入れないでだって。たぶん警察に連絡したんだ」
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(*5) 警察権力によるデモ規制
TRP主催のパレードに限らず、日本でのデモはその規模や勢いを実態よりも小さく見せようとする警察の努力が知られています。TRP主催のパレードが警察に特定の車線のみの使用しか許可されていないことや、フロート(小集団)毎にかなり間隔をおいて出発するよう警察に要請されることもそうした警察自身の目的によるものです。
※公開質問状の作成にあたっては、SNS等でのパレード参加者や各種活動家の方々のメッセージを参考にさせていただきました。